ギャラリー2
2024.01.18 up
展覧会 “Viva la Vida” 開催
まえばしガレリア ギャラリー2では国際的に活躍する4人のメキシコ人アーティスト「Bosco Sodi」「Stefan Bruggemann」「Gonzalo Lebrija」「Jose Davila」の作品を紹介致します。
メキシコのイメージといえばビーチリゾート、ピリ辛料理、テキーラ、遺跡、サボテン、治安が不安定などかもしれません。しかし彼ら4人の作品はコンセプチュアルで詩的に洗練されているのです。
展覧会のタイトルは“Viva la Vida”は「生命万歳」という意味で、フリーダ・カーロが逝去する直前に描いた作品と、コールドプレイのヒット曲から引用しました。
日本で1番知られているメキシコ人アーティストといえば、その壮絶な人生が映画にもなっているフリーダ・カーロ、この作品を見た時、彼女の抱えていた苦痛も含め、その人生はみずみずしく生きた実感があったのではないか、と思いました。
また、コールドプレイの曲は、栄華と集落を知る王、その酸いも甘いも一つの人生として歌った曲です。
生まれ育った赤城山を離れたのは約50年前、自分がアートディーラー/アートアドバイザーとして、ここ前橋で展覧会を企画するなどと夢にも思っていませんでした。
ここは子供の時にゴジラを観た映画館があった場所、少し自分の人生を振り返ってみると Viva la Vida が頭に浮かんだのです。
赤城おろしが吹く季節に毎年出向く国、私の人生をみずみずしく彩ってくれるメキシコの友人達の作品を故郷のみなさんも楽しんでいただけたら幸いです。
アートディーラー/アートアドバイザー 塩原 将志(Art Office Shiobara)
出品作家紹介
Bosco Sodi
1970年生 メキシコシティー
ボスコ・ソディは自然素材を用いた質感が高く鮮やかな顔料使った絵画とミニマルな彫刻、土地の風土と気候を作品に反映させるというサイトスペシフィックなで大規模なインスタレーションで国際的な評価の高いアーティストです。
現在はニューヨークを中心に、メキシコのオアハカ州にある安藤忠雄氏がデザインした住居兼スタジオ兼非営利アートセンター「Casa Wabi」ほか、世界各国に構えた数々の制作拠点で活動しています。
一昨年ベニスビエンナーレと同時期に開催された個展(「What goes around comes around」 Palazzo Vendramin Grimani、ベニス、イタリア、2022年)では、観客との対話を促す粘土のインスタレーション、またルネサンス期のイタリアを席捲した洋紅(Carmine)のルーツに着眼した新作群で話題を呼びました。
ソディの絵画は、おがくずに天然顔料と接着剤を混ぜ素手で直接キャンバスに塗る能動的行為と、コントロールできない瞬間や偶然を受け入れる受動的な行為によって、ざらざらとひび割れた独特の質感の美しく有機的な作品が生まれます。
日本の伝統的な「わび・さび」の美的哲学に影響され、偶然や地理的な風土や自然の要素と調和することはソディの活動の基本となっています。
大の親日家で昨年10月に SCAI THE BATHHOUSE で個展を開催
Fundación Casa Wabi
カーサ・ワビ財団はボスコ・ソディによって設立された非営利の市⺠団体で、プエルト・エスコンディード、メキシコ・シティ、東京の3カ所で現代アートと地域社会との交流を促進する活動しています。
その目的は芸術を通して地域社会の発展を促すことにあり、レジデンス、展覧会、粘土工作、映画、移動図書館という5つの重要なプログラムを通してそれを実践しています。
展覧会プログラムでは、国際的に高く評価されているアーティストの作品を460M2ある展示スペースに1年間の展覧会期間を通して紹介しています。
これまで日本でもお馴染みのローレンス・ウィナー、ウーゴ・ロンディノーネ、そして加藤泉などが招待され、2月3日からは本展出品アーティストの Jose Davila の個展が開催されます。
Stefan Bruggeman
1975年生 メキシコシティー
ステファン・ブルッゲマンはロンドンとメキシコシティー、イビサを拠点に、彫刻、映像、ペインティングやインスタレーションなど、異なる領域を横断しながら制作を続けるアーティストです。我々が日常的に目にする、ニュースやSNS、街なかに溢れる広告などのテキストを、辛辣な現代社会批評とポスト・ポップの美学的視点を交えて巧みに組み合わせ、日々加速するデジタル社会にはびこる矛盾をあぶり出します。鮮やかな色彩と鏡やネオンサインといった身近な素材を操り、時代性を読み取る透察力をポップに具現化する手法が高い評価を得ており、2019年にはパリのポンピドゥー・センターで大規模なインスタレーション作品を展示するなど、各国で展覧会やプロジェクトを展開しています。
2020年のコロナ禍におけるロックダウン期間に新たなシリーズとして生まれた「Gold Painting」シリーズ。紀元前から高貴な人々だけが装飾品として身にまとい、儀式や葬いで象徴的に用いられるなどスピリチュアルな存在であり続ける金。その後、1816年にイギリスで貨幣の価値基準として金を用いる「金本位制」が施行されるなど、価値の高いものの象徴として経済的な面でも珍重されてきました。このスピリチュアルと経済という相反する局面において、その価値を変動させ続ける金から作られる金箔を作品に用い、ブルッゲマンは不確かな現代における物の価値を問いかけます。
「Gold Painting」は、カッティングシートに写しとったテキストを木製パネルに貼り付けた上から、金箔をラフに手で擦り付けながら何層も重ねた後、パネルの裏面からタッカーを打ったり、ナイフで表面を傷つけたりすることで描かれます。そうすることで、身体的な動きの痕跡や金箔の裂け目から見える下地の色の重なり、所々めくれ上がった金箔の風合いなど、それぞれに表情の異なる作品が生み出されました。作品上に現れる文字列の向こうに途方もなく広がり続ける、デジタル社会に氾濫するテキストの洪水を想起させる装置となるのです。
KOTARO NUKAGA 、ステファン・ブルッゲマン個展「ALLOW ACTION (GOLD PAINTINGS)」解説より抜粋
Gonzalo Lebrija
1972年生 メキシコ、グアダラハラ在住
ゴンサロ・レブリハは主に時間とそれに対する主観的な経験に焦点を当て、写真、ビデオ、サウンド、彫刻、絵画などさまざまなメディアで作品制作しています。
彼は芸術を技術ではなく言語の一形態として、何にでも表現できる自由度の高い規律として捉え、作品を通して普遍的に理解される言語の開発を試みています。
一見シンプルでエレガントな幾何学的抽象画のように見えますが、実は紙飛行機の折り目です。
彼は、これまでもビルの最上階から紙飛行機が飛ぶ『Éxodo』2001年や、『Éxodo』で使用された紙飛行機の写真からコピーしたものを集めた作品『Condominio Guadalajara』2001 年などで、紙飛行機をモチーフとして使用してきました。
紙飛行機から軽さ、独創性、はかなさをイメージします、しかし富と権力の象徴とされる金色にすることで、空を飛びたいという人間の欲望と見ることもできるのです。
また金色に光り輝く画面は、寺院のステンドグラスを通して屈折する光のように、空間に反響し、宗教的で詩的なシンボルとして機能して、ルイス・バラガンが探求した光との形式的なゲームを思い起こさせる」と言われています。
Travesía Cuatro(グアダラハラ、2017年)の「Unfolded Paintings」、Palacio de las Bellas Artes (ラ・ハバナ、2016年)の「Vía Láctea」、Galerie Laurent Godin(パリ、2015年)の 「Unfolded」、Museo de Arte de Zapopan(サポパン美術館、2015年)などがある; ラ・カサ・エンセンディダ(マドリード、2015年)での「Measuring the Distance」、第13回イスタンブー ル・ビエンナーレ(2013年)、モンテレイ芸術センター(2013年)でのウンベルト・モロ監修による「Possibility of Disaster」展など。
Jose Davila
1974年生 グアダハラ メキシコ
ホセ・ダヴィラはグアダラハラの「Instituto Tecnológico y de Estudios Superiores de Occidente (ITESO)」で建築を学んだ後、ヴィジュアルアートを独学で学び、彫刻やインスタレーション、写真作品を制作。
近年数々のアートアワードを受賞し世界各地の美術館で作品を発表しているメキシコを代表するアーティストのひとりです。
芸術史における重要なアーティストや建築家の作品をアプロプリエーション(模倣、流用、引用)することによって、芸術作品に重要性や意味を与えるのは形ではなく内容であるとするコンセプチュアル・アートの定義について考察しています。
異なる要素や素材や強度をバランス良く組み合わせ、丁寧に構成された作品はユーモアと時に哀愁が混在しています。
ダヴィラのアプロプリエートした絵画シリーズ Homage of Square はジョゼフ・アルバースの25年以上もの研究の成果で代表作です。
アルバースの著書『配色の設計』(Interaction of Color 1963)は、色彩理論において、現在も多くのアーティストやデザイナーに影響を与えています。
彼はバウハウス、ブラックマウンテン・カレッジ、イエール大学で教鞭をとり、授業の目的は「目を開くこと」として、学生にただ知識を教えるのではなく、課題を与え、自ら手を動かし考え、色彩や素材のもつ新しい可能性を発見させようとしました。
ダヴィラの Homage of Square シリーズは、アルバースの数学的に決定された正方形のフォーマットの平面作品を、運動状態にある3次元の立体へと展開しました。
色の知覚に関するアルバースの理論を参照し、動きと容積を付加して、色彩と形態の関係について探求しています。
現代メキシコ大学美術館(MUAC、メキシコ・シティ)、カイシャ・フォーラム(マドリード)、MoMA PS1(ニューヨーク)、クンストヴェルケ(ベルリン)、サンディエゴ美術館、レイナ・ソフィア美術 館(マドリード)、MAK(ウィーン)、Fundacion/Coleccion JUMEX(メキシコ・シティ)、バス美術 館(マイアミ)、近代美術館(サンパウロ)、ムーア・スペース(マイアミ)、NICC(アントワープ) などで展示されている。
【展覧会情報】
Art Office Shiobara (アート オフィス シオバラ)
展覧会名 : “Viva la Vida”
会期 : 2024 年 1 月 20 日(土)〜3月3日(日)11:00〜19:00 (月・火・祝休廊)
会場 : まえばしガレリア ギャラリー2 (群馬県前橋市千代田町 5-9-1)
オープニングレセプション : 初日 17:00〜
お問合せ:gallery2@towndevelop.jp 070-8926-0960